別ブログもやっております! 50年間の役目を終えた「長岡市厚生会館」! その静かなる有終の日々…
「MOANIN' 長岡市厚生会館」

Tuesday, August 30, 2011

2010年の夏旅 06/大阪→岡山・後楽園流店


 【2010年7月29日(木)】
 大阪で泊まった宿は、鉄筋コンクリート造に畳を敷きこんだ「和室」で、広さは三畳一間でした。過ごしやすい部屋でした。


三畳敷きの部屋をチェックアウトして向かったのは、INAXギャラリーの『幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷』展です。


 フライヤーのアオリ文句は「旅に生き、莫大な記録を残した破天荒な才人 終の庵、一畳の宇宙」
 幕末から明治を生きた武四郎は、蝦夷を初め全国を探検・記録し、蝦夷を「北海道」と名付けたのも彼だそうです。70歳を前に、全国各地の社寺仏閣から古材を寄付してもらい、8年の歳月をかけて書斎「一畳敷」を完成させました。
 展覧会では、武四郎が描いた蝦夷の精密な地図や、生活や風習を記録したフィールドノートが展示してありました。また「一畳敷」も大判写真のプリントパネルにより、原寸で再現展示されていました。


 さて大阪には半日も滞在せず、11時にはJR大阪駅を発ち、18きっぷで東海道本線-山陽本線にて岡山を目指しました。途中、姫路駅のホームで名物「駅そば」の昼食をとりました。岡山には14時半ころ着きました。



 岡山では、今回旅に出ようと思った大きなきっかけの一つ、後楽園にある「流店」というあずまやの建物を訪ねようと思いました。JR岡山駅から路面電車に乗り、「城下」で降りて、後楽園に向けて歩きました。


 出石町という一角まで歩くと、古い建物に「富士商店」と看板がかかげてあるお店がありました。




 興味を惹かれて中に入ってみると、日本の雑貨や文具を扱うお店でした。昔ながらの定番商品の中からデザインが良いものを選んで置いてあるようです。
 参考ブログはこちら


 なにか買おうと思い、B6サイズの小さなバインダーを買い求めました。
 何の気なしに選んだバインダーでしたが、実はすごく便利で、メモの束をはさんでどこにでも持っていける、ちょうどいいサイズでした。その後の旅でも、また旅から帰って今日までも、毎日使う必須アイテムになりました。


 富士商店の店員さんから、店の裏手の町屋を使って面白いことをやっている「かじこ」という人達がいると聞き、訪ねてみました。


 かじことは、「宿泊できる滞在型アートスペース」だそうです。この年(2010年)は「瀬戸内国際芸術祭」が開かれており、世界から人が瀬戸内地区に集まります。「かじこ」はアーティストやアートのファンを宿泊客として受け入れ、また宿泊客自身が企画者となってイベントやワークショップを開くという活動をしているそうです。
 http://kajico.org/
 期間限定で運営され、空き家となっていた町屋を整備して「かじこ」の舞台としています。建物を少し見学させてもらいました。





 昔の町屋は、ぜいたくを控える意味などから2階の階高が極端に低く、それを「つし二階」と呼ぶそうですが、そのつし二階の空間の中に、たぶん初めて入りました。
 あらわしの天井の低さは、そのまま「落ち着き」にもつながりそうです。窓のすぐ外には、市内を流れる旭川がありました。川からひんやりした風が部屋に流れていました。


 かじこに滞在したアーティストの作品も見せてもらいました。その中に、カセットテープレコーダーをかじこの宿泊客に渡し、町を歩きながらレポートをしてもらい、そのテープをアーカイブしていくという作品がありました。
 これから後楽園を訪ねる僕も、せっかくなのでレポートをしてみてはどうかという話になり、レコーダーを片手に後楽園を目指すことになりました。


 さて、後楽園の「流店」です。
 予想でイメージしていたより、小ぶりな建物だと思いました。




 流店には壁が無く、1階屋根と2階のやぐらが柱のみで支えられ、宙に浮いたような形になっています。建物の中には後楽園の池から水が引き込まれています。かつては藩主の庭巡りの休憩所だったそうです。





 この日の夜に、後楽園のライトアップイベントがあるそうで、その開演を待つ人たちが流店を休憩場所にして、ごろごろ寝っ転がっていました。僕には結構びっくりする眺めでした。お弁当を広げる家族もいて、「ソースこぼすなよ。」とも思いました。
 しかし考えてみれば、これは全く正しい建物の使い方です。流店の風通しの良さ、すぐれた居心地を目撃する体験となりました。



 流店に来るまでは、テープレコーダーに感想をしゃべっていたのですが、流店で休む人が大勢いる前では、さすがに一人でブツブツしゃべるのは躊躇しました。それでも、何人かにレコーダーを向けてインタビューしたりして、僕も楽しく過ごしました。


 平面をスケッチして気付きましたが、水によって分割された床の広さは等分ではなく、床と水路は 3:4:5 に分割されていました。(※)


(※)後日訂正 スケッチ中、床と水路の寸法は「900・1200・1500」とありますが、資料で確かめたところそれは間違いで、正しくは「990・1640・1960」のようです。分割比も 2:3:4 に近い値が正しいものとなります。スケッチは人々の間を縫って描いていたので、建物にスケールはあてずに目測で寸法を取っていました。ですので、かような結果となりました。訂正します。


 後楽園の見学を済ませて、かじこに立ち寄り、レコーダーを返して、あいさつをしてお別れしました。あのテープの作品、今はどこにあるのだろう?


 路面電車で岡山駅に戻り、JRで広島県の福山市まで進んで、宿を探して投宿しました。


(旅に関する記事は、ラベル「2010年の夏旅」をご覧ください。)
 

Sunday, August 28, 2011

2010年の夏旅 05/掛川市・資生堂アートハウス


 【2010年7月28日(水)】
 掛川市で一夜を過ごした翌日、旅の5日目は、市内の「資生堂アートハウス」を訪れました。資生堂の企業メセナによる美術館です。


 展示室の平面ダイアグラムは、下のようになっています。円弧と四角形がもとになり、それらが組み合わされています。数字は床レベルの相対値(推定)を表しています。(よろしければ拡大表示でどうぞ。クリック→別ウインドウで開きます。)


 まるでひとふで描きのように、それぞれの床がなめらかに連続しています。館内を歩き回ってみると、幾何学による理知的な構成が、なめらかな回遊動線をより引き立てているように感じました。


 下の画像は、公式ホームページ(http://www.shiseido.co.jp/art-house/)からのものです。


 さて、掛川市内には「掛川城天守閣」もありました。この天守閣は復元建築なのですが、鉄筋コンクリート造などではなく、復元が伝統的な木造でなされた先駆的な事例だということでした。







 天守閣を見た後は、掛川市を午後の2時半ころに発ち、青春18きっぷで大阪を目指しました。


 夜8時ころ大阪に着きました。西成区の動物園前駅ちかくの、リーズナブルなビジネスホテルに投宿しました。

(旅に関する記事は、ラベル「2010年の夏旅」をご覧ください。)
 
 

Friday, August 26, 2011

2010年の夏旅 04/『建築はどこにあるの?』 展


 【2010年7月27日(火)】

 南千住の宿を出て、竹橋に向かいました。
 東京国立近代美術館の『建築はどこにあるの?』という展覧会を見るためです。



 7組の建築家によるインスタレーションの展示です。(作品の写真撮影がOKでした。)


 中村竜治さんの『とうもろこし畑』というこの作品は、昨年かなり話題となっていました。細い紙の棒を接着し、どこまでも反復しています。正四面体を構成単位としていたように記憶しています。『とうもろこし畑』というポエティックなタイトルと、作品そのものが、互いの相乗効果で魅力を高めあっていると感じました。うわさ通りとても印象的でした。



 菊地宏さんの作品です。移動する光源の光を模型に当て、別室のモニターに模型の内部を拡大投影しています。ストレート・アヘッドに空間や光に向き合った展示で、僕は気に入りました。


 展覧会を見た後は、隣のパレスサイドビル内の食堂で昼食をとりました。



 午後から東京を離れ、JR東海道線で静岡県掛川市に向かいました。

 静岡県内の眺めです。等高線に沿うように、あるいは直行するように、茶畑の列がくねりながら並んでいます。茶畑に林立している電柱のようなものは、「モグラ除けの機構かな」と勝手に想像しているのですが…




 日没前に掛川にたどり着き、市内を散策がてら宿を探しました。「ニューホテルわかまつ」というホテルを取りました。
 ここは1泊5,000円以上して、今回の旅でもっとも高い宿賃を払いました。建物のデザインは90年代に流行したようなポストモダン風のものでした。
 しかし、客室はかなり落ち着ける雰囲気で、たいへん良かったです。スケール感が良かったのか、(赤くしるし付けした)斜めの壁の扱い方が良かったのか…


(旅に関する記事は、ラベル「2010年の夏旅」をご覧ください。)
 

Tuesday, August 23, 2011

2010年の夏旅 03/川越市



 【2010年7月26日(月)】
 旅の3日目は、宇都宮から川越市に向かいました。


 川越といえば蔵造りの町並みで名高いです。僕が川越を訪れるのは、約10年ぶりでした。
 JR川越駅の観光案内所で市内の地図をもらい、すすめられたコースに沿って、町歩きしてみました。駅前からのショッピングモールを抜け、まずは「川越大師 喜多院」を目指しました。


 喜多院の渡り廊下です。途中にベンチが仕立てられていました。






 3階建てのドーム状の建物は、通称「大正浪漫夢通り」にありました「いせや」というお菓子屋さんです。古い建物にドーム部分を増築したようにも見えますが、お聞きしたところそうではなく、全くの新築の建物だそうです。軒先の露天でかき氷をいただきました。




 実はこの日は、夏バテなのか何なのか、たいへん体が重く疲れていました。昼食は悩んだ末に、奮発してうなぎを食べました。食べて実感しましたが、うなぎって、効きますね。



 メインの「蔵造りの町並み」通りです。電線は地中に埋設されています。



 真ん中に見えるコンクリートの建物は、10年前には無かったもので、「蘭山美術館」などが入っています。敷地を縦に分割し、通り抜けできるギャラリー空間と店舗を設け、建物も小さな切妻型に分節するなど気を使ったデザインでした。しかし、キャノピーと衝立(FRPグレーチング)の、町並みに対する効果のほどはよく分かりません。(壁面線の協定が理由で?設けられたのかなと思いました。)
 美術館の裏手側の駐車場兼公園で、ベンチに座って1時間ほどうつらうつら休んでいたら、管理人の方にたいへん心配していただきました。


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 川越には再訪ということもあり、また疲労もあって、新鮮な知見というのは、今回はあまり得られなかったかもしれません。「蔵造りの町並み」通りは交通量も多く、車社会と古い町並みとの関係など、一筋縄では行かない面があるなあと感じました。(もしかしたら新潟県村上市などでも、同じような問題があるのかもしれません。機会があれば訪れて確かめてみたいと思います。)

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 この日は川越にとどまらず、先を急ぐことにしました。東武東上線の川越市駅までバスで向かい、池袋でJRに乗り換えて南千住へ行き、ビジネスホテルに泊まりました。

(旅に関する記事は、ラベル「2010年の夏旅」をご覧ください。)